ちょっと間が空きましたが、現在宝塚大劇場で現在上演中の星組公演「柳生忍法帖 / モアー・ダンディズム!」。
今回はショー「モアー・ダンディズム!」の感想を書いてきます。
一見クラシカルな王道に見せかけつつも、現代感もしっかり取り込まれていて、岡田先生の取捨選択のセンスの高さがすごいなと(上から目線で申し訳ないですが)感じられる一作でした。
ところどころ80年代っぽさも感じさせつつ、シャープな印象も持たせるバランスがすごかったですね。
ロマンチック・レビューということで……
ロマンチック・レビュー……というと、私の中では「まったりとしたレビューシリーズ」というイメージでした。
これぞ宝塚!という「らしさ」がたくさん詰まっていることは間違いないのですが、クラシカルな雰囲気にかなり寄っている印象が強かった、というのが正直なところ。
なので、今回も結構まったりとしたレビューなのかな?と思っていました。
もっとゆっくりかと思いきや、テンポ良い進み。
が、思いの外テンポがよく、私が持っていた「ロマンチック・レビュー」に対してのマイナス寄りの印象は覆されたと言ってもよかったです。
プロローグのお衣装の雰囲気や色味は「これぞロマンチック・レビュー!」という感じ。
グリーン、イエロー、ブルー、オレンジの4色のお衣装をそれぞれまとった組子たち。
少しくすみカラーになっているのは、現在の流行がさりげなく取り入れられているということでしょうか。
1つのシーンは長め
ひとつのシーンは長めかなと思います。
最近でいえば月組の「Dream Chaser」に似ていますね。ひとつの場面を長めに取り、深く掘り下げるような感じ。
かといってそれぞれが「長すぎる」と感じることもなく、それでいてぶつ切りな印象もなく……というのは、さすが岡田先生!
セットが凝っているところも見どころかなと
私が非常に気になった、心惹かれたのはセット。
これ、かなり凝っているのでは……?
特にプロローグ→愛ちゃん(愛月ひかるさん)ソロからの「ミッション」のシーン。
舞った手紙がデザインされたセットなんですけど、とても美しくて幻想的。
公式のギャラリーにもちょろっと掲載されているので、まだ観劇していない方は参考になさってください!(モアー・ダンディズム!1段目右端)
さらにそこに文字が映し出されて……と、演出もすごく凝っているんです。
このシーンに限らず、全体的にすごく華やかに見えるセット・演出がしっかりと行われていて、私にはとても現代的に見えました。
(どんだけクラシカルなイメージがあるねんって感じですけど)
シーン切り替えが少ないからこそ、ひとつひとつの場面が豪華に出来るのかな?とも。
退団する愛ちゃんの見せ場がしっかりある
そして、今回の公演を持って退団する愛ちゃんの見せ場もしっかり!
プロローグ後はひとりで堂々とソロ。ギャラリーでは2枚目の写真のところですね。
薄いパープルがとても上品で、愛ちゃんにとっても似合ってました。
余談ですが、私はこのロングなチャイナスタイルがとても好きです。
そして「歌劇」の座談会でも書かれていた、軍服の場面!
これは岡田先生の持ち味というか、十八番って感じですよね。
愛ちゃん、私の記憶よりも足が細くてビックリしました。こんなに細かったっけ!?
ブーツが太すぎたの……?
ラストの3人の演出はとても好き
ラストフィナーレ前、基本であればデュエダンに該当する部分は、トップコンビ二人に愛ちゃんを加えた3人構成。
最初はこっちゃん(礼真琴さん)と愛ちゃんがメインで踊り、その後こっちゃんとひっとん(舞空瞳さん)のダンスを愛ちゃんが歌で盛り上げるという流れになっているのですが、これまた良かったです。
デュエダンに2番手さんが加わることについては、人によって嬉しい、そうでもない(デュエダンは二人のものであってほしい)と様々な思いや意見が交錯するところではあるかな、と感じています。
私はデュエダンは基本二人でやってほしい派(2番手さんが最初歌ってくれて途中でハケる演出は大好物)。
ですが「モアー・ダンディズム!」では、このシーンに入る前にきっちりと二人で長めのデュエダンを披露していたので(ここがデュエダン?と思ったほどでした)、3人アリ、むしろアリ!って感想になりました。
愛ちゃんが退団するっていうことを除いても、素敵な演出だったと感じます。
しっかりと出番があるのは番手まで、という印象
ここからはもう少し全体的なところに触れていこうかな、と思います。
私が星組さんの若手の子たちをあまり把握できてないとう前提のお話になりますが、ショーはきっちりと番手分けされていて、「若手もガッツリ見せ場があります!」という感じはありません。
若手でぱっと目立ったのはやはり新人公演主演も経験している碧海さりおくんや天飛華音くんあたりでしょうか。群舞でもピックアップされています。
個人的には、あかちゃん(綺城ひか理さん)とぴーすけ(天華えまさん)がニコイチで使い続けられているのが印象的でした。
娘役さんはほのかちゃんくらいまでかな?
娘役さんも番手がしっかりと分けられている印象です。
くらっち(有沙瞳さん)、はるこさん(音波みのりさん)、ほのかちゃん(小桜ほのかさん)くらいまでは見せ場がしっかりある感じ。
とはいえ、ガッツリ見せ場!というのはくらっちくらいかな……?
男役さんの出番のほうがやっぱり多いですね。娘役さんだけのシーンもちょこちょこ挟んでくれるので「全然娘役さん出てないじゃん!」という感想にはなりづらいかなと感じていますが。
ひっとんがゲキカワなので見て。
これは言っておかなければならない…ひっとんがとっても可愛くてたまらないので全人類に見ていただきたいです。
赤文字にするくらい可愛いです。
キャリオカの場面かな?あそこのピンクのドレスはまさにディズニープリンセスでは?と言いたくなる愛らしさ。
しかし赤いドレスの場面では大人っぽい妖艶さもあり……これは素晴らしいものです、素晴らしいものですよ……。
お芝居の時も思いましたが、歌唱力もめきめき上がってますね。特に高音の声のハリがすごく出てきたように感じます。
こんなんもう無敵じゃん……。
今後も親戚のおじさんツラで応援していきたいです。
岡田先生の文章に唸りつつ楽しんだ一作
最後に、公演プログラムで岡田先生が書かれていたことについて、どうしても思うことがありまして。
さて、私は”陶酔”がレビュー作品には大切な要素だと思っております。
かつての、大巨匠、白井鐵造先生の作品や私が若い時代に夢中になっていた、M.G.M のミュージカル映画には、心ときめかす、一瞬の”陶酔”のシーンが必ずありました。時代が変り、最近は、スピード感やリズムで力強く表現する舞台が主流の 何か”あわただしく、落ちつきがない”ように感じます。『モアー・ダンディズム!』でひとときの”陶酔の時”を味わっていただければ幸いです。
宝塚歌劇団 星組公演「柳生忍法帖/モアー・ダンディズム!」公演プログラムより
ここが結構刺さったんですよね、個人的に。
私は正直いうと、昔の公演映像を見ていて「テンポが悪いな」って思うことも多いです。テンポが悪いってよりは、「ちょっともったりしてるな」というニュアンスのほうが近いですね。
今って昔に比べると情報であってもテンポが上がっていてそれこそすぐに消費されて次にいっちゃうような、刹那的なものが当たり前になっています。
そんな中、岡田先生のこの文章を見て「たしかにそうだよな……」と感じたわけです。
さらにぶっちゃけますと、私は実は「ベルばら」に対してもテンポがもう今どきではないなと感じています。
とはいえベルばらをなくせとは全く思わないですし、あのテンポだからこそ出せる間は絶対にあるわけで、そこが岡田先生の仰る「陶酔」に当たる部分なのかなと思ったりもするわけで。
現在の私の中の詰め込みショー代表は野口先生ですが、あのテイストばっかりになったら正直つらいですし…(笑)。
公演を観る前にこの文章を読んで「陶酔か、なるほど……それを楽しんで見てみるように意識しよう!」と思ったら、意外にもテンポがよくてそれはそれで驚いたんですけど。
それでもひとつの場面の長さは最近の中では長い方だと思います。
その中で紡がれるストーリーや表情、場と場のつなぎの間……そういったちょっとした部分にも繊細さを感じられるものでした。
私みたいに、「岡田先生だからクラシカルでゆったり目なのかなあ」と思っている方にこそ見ていただきたい!と思える一作です。
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