【雪組】「fff(2021.01.06)」ネタバレあり感想1:全編通して。哲学的な内容が織り込まれた彼の人生を描いたもの

雪組
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だいもん(望海風斗さん)ときぃちゃん(真彩希帆さん)の退団公演「fff / シルクロード」のお芝居「fff-フォルティッシッシモ- ~歓喜に歌え!~」のネタバレしまくり感想を書いていきます!

ざっくりとしたネタバレなしの感想は前回こちらの記事で書きましたが、今回はネタバレしまくりで「どんな感じの流れなのか」と「自分が引っかかったポイント」をまとめていきたいと思っています。

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ベートーヴェンが自分と向き合うお話が軸。

このお芝居の軸は「ベートーヴェンがいかに自分と向き合うか」です。

破天荒で身分などを気にせず、「自分のしたいように振る舞う」ことを良しとしている彼ですが、自身が聴力を失う中で否が応でも自分がこれまで逃げてきた部分、目をそむけていた部分と向き合うことになり、そしてラストへと続いていく…というストーリーになっています。

個人的には「ベートーヴェンの自己受容の話」だと思う

私としてはこのお話は「壮大なベートーヴェンの自己受容」として受け止めているのですが、そのことだけで1記事書けそうなくらいなので、それは別記事でまた書きたいなと。

ベートーヴェンという偉大な人物がこれまで目をそむけてきた部分と向き合うとなると、非常に遠いものに思えてしまいますが、実は私たちにとっても非常に身近というか、自分にも当てはまるところがあるな……と感じる方も多いのではないでしょうか。

このへんは、哲学に明るいウエクミ先生のエッセンスが多分に盛り込まれているように感じました。

意識の持ち方や受け止め方など、「自己と向き合う」という点において非常に繊細に描かれていたんじゃないかなと思います

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きぃちゃん演じる「謎の女」が非常によきです。

ベートーヴェンが自身と向き合うためのキーとなるのが、きぃちゃん演じる「謎の女」。

ベートーヴェンにしか見えず、しかし(彼にとっては)実体を持って常に彼のそばにおり、なんだかんだと文句を言いつつも要求に応えてくれる女性です。

正体が明かされるのがかなり終盤なのですが、途中で「私は架空の存在だから」とサラリと言ってのけていたり、なかなか豪胆です。

きぃちゃんの演技が非常にチャーミングで、まさかのコメディなシーンまであり、非常に驚きました。もっとシリアス路線かと思っていたので…(笑)。

コメディ部分でほっこりできた分、終盤の彼女の歌を聞くことで心に生まれる切なさの落差を計算されていたのかもしれません。さすがの演出…!

「人生の旅の友」は納得!

最終的なネタバレになってしまいますが、きぃちゃんはいわゆる「不幸」が実体化したもの。

ベートーヴェンだけでなく、多くの人が体験したくない、どこかに蓋をしておきたい忌まわしいもの……その集合体が彼女で、劇中では「運命」と呼ばれていました。

劇中でベートーヴェンが実際に「運命」を演奏するシーンがあります。

謎の女が「なにその変な曲」と感想を述べると、「これは君をイメージした曲なんだけどな」と返されるのですが、これは彼女=運命であることを示唆しているのかなと深読みできちゃいますね。

しかし最終的にベートーヴェンは彼女…つまり、自分が目を背けてきたものと向き合い、受け入れることで昇華させ、最終的に「交響曲第九番」を完成させるまでに至ります。

「歌劇」の座談会だったかな。プログラムでもきぃちゃんへのインタビューにて掲載されていますが、謎の女はベートーヴェンの「人生の旅の友」という位置づけなのです。

それが非常にだいきほの関係性として心地よく馴染むもので、お話の展開としても納得できる部分だなと感じました。

きぃちゃん自身がすごくそれに対して喜んでいたのも印象的です

ナポレオンの描写は歴史にそってしっかり目。

ベートーヴェンの一方的な心の友となるナポレオンについては、時代背景が「ナポレオン戦争」の時期であるためか、歴史に沿ってしっかりと描かれている印象です。

面白いのが、これだけナポレオンの描写があっても、ベートーヴェンと邂逅するのはお互いの死に際のみ、という点でしょうか。

自由を愛するベートーヴェンからすると、自由を求めて戦争を始めたナポレオンがあらたな統治者になることは、結局頭がすげかわっただけでその実変わっていない!という反抗心を生み出します。

必要な部分ではあるけども……

それに対する(そうするしかなかったという結論に達する)ナポレオンの心情も丁寧に描かれるのですが、必要な要素ではあったものの、少々難解…と感じる方もいそうだなと思いました。

中盤~終盤にかけては歴史・思想に関する応酬があるため(ナポレオンとゲーテ、ゲーテとベートーヴェン)、言い方は悪いですが少々退屈に感じるところも。

いるかいらないかで言えば絶対にいる場所なのですが、しっかり頭で理解しながら観ないと!という気持ちになったので、体力を使うところも多かったですね…

稀代の音楽家たちのストーリーテラーっぷりが楽しい!

このお話は、天国にも地獄にも行けない稀代の音楽家たちであるヘンデル(真那春人さん)、モーツァルト(彩みちるさん)、テレマン(縣千さん)の3人がストーリーテラーとなって、要所要所で解説もしてくれます。

この3人のやりとりがまた楽しい!本編では戦争も行われますし、シリアスなシーンも多いのですが、この3人が癒やしになってくれることも多かったです。

ベートーヴェンの時代では偉大な音楽家として名前が残っているので、バッハと並んで肖像画の中に入っていたり(ミーマイのご先祖様をイメージしてもらえれば)、石像になっていたりとコミカルな演出が多いのも見どころではないでしょうか。

耳が聴こえなくなったのって、もしや???

ベートーヴェンの音楽(英雄)がうるさい!!と感じた3人。

確かテレマンが雲を耳に入れればいいんだ!と雲をちぎり、それをベートーヴェンの耳にも詰めちゃうんですよね。

もしや、それで聴力が……!?

さすがにそんなことはないと思うのですが、ついついそう思ってしまう演出でした

ゲーテもストーリーテラーの一部を担っています

また、翔ちゃん(彩凪翔さん)演じるゲーテも、ストーリーテラーの一部を担っていると感じました。

歴史を読む人というよりは、思想や心情を読む(解説する)人としている立ち位置かな。

個人的にはもうちょっと出番があってもよかったかな…!!とは思ったり。

ただ、物語の中核にしっかりと絡んでくる人物ではあるので、美味しい役どころではありますね。

 

ラストはみんな真っ白!

物語のラスト、ナポレオンと邂逅し心を通わせたベートーヴェン。

さらに、自身の「運命」とも言える謎の女を愛(理解)しますが、そこで彼の人生は終わりを迎えてしまいます。

しかしそこはベートーヴェン、彼は死ぬ前にあと1曲…と、謎の女と二人で「第九」を作り上げ。

そこから喜びの歌…のアレンジを入れつつみんな白い服で合唱しオーラス!と、一気に「サヨナラ公演」らしさを出してきます。

このときのだいもんの声量というか、歌い上げが本当にすごいです。

運動会(組子が円形になって回るやつ)もあります。

しっとりではなくめちゃくちゃパワフルな終わり方です!

通常公演か、退団公演かで満足度が変わりそうではある。

観劇後1日経って思うことは、「通常の公演として見たときと、退団公演として見たときで満足度が変わりそうな部分もあるな」ということ。

これは別に今回だけの話ではありませんけどね。

お芝居も面白いのは間違いないと思います(多少スルメ感はあるかなって思いますが)が、個人的には通常公演っぽい感じだったな…ってのはありますね。

サヨナラ度を上げてほしいというわけでもないのですが、なんだろう上手くいえないな~。

思いっきりサヨナラっぽくしてほしい方もいれば、いつもの公演のようにさらっとしてほしいって方もいると思いますので、本当に好みの問題だなと。

これはお芝居だけでなく、ショーとひとつのまとまりで感じたことではあるのですが。

うーん、次回また観劇したら考えがころっと変わるかもしれません。

そして全然ボン(ベートーヴェンの故郷)についての話ができていないことに気づく。ここらへんもまた別途書きたいですね…!

 

 

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