「宝塚歌劇 明日海りお論 89期と歩んできた時代」感想

「宝塚歌劇 明日海りお論 89期と歩んできた時代」感想掲載誌感想
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12月7日?に発売された書籍「宝塚歌劇 明日海りお論 89期と歩んできた時代」を買いました。

お値段は税込みで1,800円程度とそこそこ。
これ雑誌(ペーパーバック系)と思っていたら、きちんとした新書なんですね。
というわけで、「タイトル的に気になるけどお値段もあれだし…」と迷っている方がいるかも、と思われたので簡単ではありますが感想を残したいと思います。

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「明日海りお」を軸とした宝塚の歴史を語る本

私がこの本を読んだ第一印象は「明日海りお(及び89期)を軸とした、宝塚の歴史を語る本だな」でした。

もちろんタイトル通りりおちゃん(明日海りおさん)はきちんと取り上げられているのですが、彼女と苦楽をともにした89期の面々や、彼女の出演作品に出ているスターたちも一通り取り上げられている印象です。

ですので、「明日海りおを中心にして書かれた一冊」であることは間違いないものの、「明日海りおに関してのみが語りぬかれた一冊ではない」と言えます。

音楽学校入学前や音楽学校時代の話もそこそこ出てくる

とはいえ、音楽学校に入学するために通っていた宝塚のバレエスクールの話が出てきたり(私はりおちゃんがそのバレエスクールに行っているとはこの本を読むまで知りませんでした)、地元静岡時代に通っていたバレエスクールの先生にインタビューをされているなど、他の本ではなかなか知り得ることが出来ないであろう「ディープな明日海りお像(若い頃のですが)」を垣間見ることが出来る本でもあります。

また、著者は89期の「すみれ売り」にも行っており、その際の思い出や当時の様子なども描かれています。

私のようなにわかなファンからすれば知らない情報もたくさん出ているので(入団してからはそうディープな話は出てきませんが)、「明日海りおと宝塚クロニクル」的な一冊とも言えるかも知れません。

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真琴つばささん時代まで遡る

宝塚の歴史についても語られると書きましたが、具体的にどのあたりの時期も描かれるのか…ということに触れますと、りおちゃんが宝塚に入るきっかけとなった「BLUE・MOON・BLUE」から…つまり真琴つばささんの時代からになります。

もちろんもっと過去にも必要であれば遡ることはありましたが、具体的な歴史として遡るのはこのあたりと言ってよいでしょう。

個人的には著者の松島奈巳氏が「なんでBLUE・MOON・BLUEが(彼女たちに)ハマったんだろう…」という困惑を記しているところにちょっと笑えました。

私も映像で見ましたけど、あれはかなり個性的な作品と言わざるを得ない…と思っております。

89期についても多く書かれている

また、この本ではりおちゃんだけではなく89期の面々についても多く書かれています。

特にトップスターになっただいもん(望海風斗さん)は新人公演の初主演の時期やトップに就任してからの演目の内容などをりおちゃんと比較して書かれているなどかなり大きくページが割かれている印象です。

主要スターであったみやちゃん(美弥るりかさん)、カチャちゃん(凪七瑠海さん)、かいちゃん(七海ひろきさん)など。娘役さんではねねちゃん(夢咲ねねさん)も取り上げられていました。

彼女たちがどのような立ち位置(番手)でどのような役を演じてきて、それを著者がどのような視点でみていたのか…といったことが度々挟まれますので、途中から「りおちゃんの本読んでるんじゃなかったっけ?」と思うことも正直あります(笑)。

また、同期の89期や、りおちゃんの新人公演~準トップ時代くらいまでのトップさんやスターさんについては結構詳しく書かれている部分は多いです。

が、月組時代に切磋琢磨してきた仲間…具体的にはちなつちゃん(鳳月杏さん)やたまきち(珠城りょう)といった下級生との関係性については殆ど触れていないといってもよく、軽く紹介されている程度です。

それは花組組替え後についても同様で、キキちゃん(芹香斗亜さん)やれいちゃん(柚香光さん)についても立場的な意味では触れられているものの、いわゆる「こういう絡みがあったよ」といった内容についてはバッサリとカットされています

基本的にはりおちゃん及び89期以外については簡単に事実をまとめている、といった感じでしょうか。準トップ時代のまさお(龍真咲さん)については多少著者の想像も含まれている部分がありますが…。

単一著者なので意見が合う・合わないもあるかも

また、この本は「宝塚イズム」のように複数の著者が寄稿(執筆)しているわけではなく、 松島奈巳氏が一人で書き上げている本です。

そのため、当然ではありますが彼女の視点による演目の感想が多くなるため「え?私とは意見が違うんだけど…」となる部分が出てくる可能性はあるでしょう。

もちろん「ああこのひとはこう思ってるのね」という感じで読めば全く問題ないものであり、決めつけを著書内でされていることはないと感じていますが、私としては「ここは意見あわねえなあ」って部分は多少ありました。

でもそれはそれ、人の意見なので気にはなりませんが。

結局りおちゃんファンは買いなのか?

結局この本は買いなのかどうか?という点。

私自身は買って面白かったな~とは思っていますが、正直万人受けする本ではないかもな…とも思っています。個人的にこの本を読んだ印象を端的にまとめると

本を読んだ印象
  • りおちゃんを取り巻く環境がしっかりと書かれている
  • 本科生時代の彼女を見た筆者の印象なども書かれているので、昔の彼女の雰囲気を知りたいならいいかも
  • りおちゃんが中心ではあるが、宝塚全体の印象や他のスターに割かれている部分も多め
  • 自分のようなにわかファンには当時のファンの空気も多少感じられる文面

といた感じです。

ですので、

  • りおちゃん関連書籍なら欲しいと思っている
  • 彼女が在籍している時代(受験前時代も含む)の宝塚全般の歴史も知りたいと思っている
  • 89期が好きなので、そのあたりも触れて欲しい

という方であれば買いだと思っています。

実際私がファンでない時代のことも詳細に書かれていて、「当時りおちゃんを見ていた人はこう思ったのか~」と感じられる部分も多々ありました。

個人的にはトップになってからの軌跡というよりは「どうやって明日海りおという存在はつくられてきたのか」という点にに主眼が置かれているように感じたので、長く演劇ライターを務められてきた著者がどのように明日海りおという存在を表現するのか、という点で気になる!という方にもオススメ出来るかと思います。

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