前回・前々回に引き続き今回はキャスト別感想です。
これまでに書いた記事とも多分ダブっている部分はたくさんあるんですが、それほどまでに心に響いた…ということでご容赦いただけると嬉しいです。
今回は主演のお二人をピックアップ。お二人共本当に素晴らしくて、いいもの見せてもらいました!
瀬央ゆりあさん(伊予部清彦役)
書生として真面目に生きている好青年。
周りに流されることなく、自分がすべきことをきちんと考えている、もしかしたら実年齢よりもちょっと大人びた青年なのかもしれません。
しかしひょんなことから玉姫と出会い、龍の宮に招かれることから彼の運命は一変。
盛大なおもてなしを受け、美しくもどこか物悲しい雰囲気を持つ玉姫に心惹かれるも、彼女には刃を向けられます。
そして追い出されるように地上に戻った時には、既に30年の月日が過ぎていた…。
と、唐突に1幕のあらすじを書きましたが、この時の清彦は1行目に書いたような、真面目な好青年。
しかし2幕に入ると30年の時間についていけないようで(まあ普通無理よね)、触ったら壊れてしまうような脆さがありながらも、玉姫への想いをつのらせていく時は命の炎が燃えているかのような力強さがあり、大きく清彦の人間性が変わっているように感じます。
真面目だからこそ、ただ一途に愚鈍に玉姫を救いたいと行動する清彦。
玉姫が龍の姿に変わっても「どうして目を離すことが出来ましょう」、玉姫に自分を殺してくれと願われても「僕には出来ません」。真面目だけど、なんとも情熱的なセリフが自然なキャラクター造形でした。
それはお話の時代が明治中期、かつ書生という立場も影響しているのかもしれません。
少なくとも私は、ですが。そういう時代の書生さんって真面目で落ち着いている印象があるからです。
とりあえず素晴らしかったとしか言えない!
そんな清彦を演じぬいた瀬央さん。いやいや本当に。どうして。素晴らしかったです。
私はあまり星組の別箱公演は観ていなくて、本公演でしか拝見することはないレベルなんですけれど、そもそも瀬央さんって明るいキャラクターが多い印象があったんです。キャラクター性としては陽!みたいな。
しかし今回はめちゃくちゃに陰のキャラクターを演じてられましたが、それが私にとってはとてもピッタリとハマっているように見えて、「この子はこういう心の中に秘めたものを耐えている絵がなんて似合うのだろう!!」と感激しました。
歌も踊りも芝居もそつなくこなす、そんな印象だった瀬央さんの中に青い炎が見えた気がしました。
本公演でも、もっともっと陰の役をしてほしい。そして言外や、表情の中に絞り出されたものを観てみたい。そう思わせてくれる役者さんでした。
95期の中で一番好きなタイプの役者さんかもしれません。瀬央さん。
有沙瞳さん(玉姫役)
この作品は当然瀬央さんがいなければ成立しない物語だと思っていますが、彼女がいなければ成立しなかったとも思います。
彼女のお芝居を初めて(映像で)観たのは「伯爵令嬢」。
当時研3くらいだったかというのに、なんとも堂々と悪女を演じきっていた、その思い切りの良さと舞台度胸に「すごい娘役さんだ!!」と驚いた記憶があります。
いつの間にか星組に組替えし、着々とキャリアを積んできた彼女。
元々下手だと思ったことは一度もありませんが、前回の本公演「God of Stars -食聖-」ではショートカットのなんとも素敵(で私好み)なキャラクターを演じていました。
「鎌足」は観ていなかったのですが、観たお友達曰く非常に良かったとのことで、今回も心配は全くなく、観たのですが…いや~こちらも素晴らしかったです。
複雑なキャラクターを演じきる確かな実力
玉姫はキャラクターとして非常に複雑です。
まず年齢が何番目に…かはわからないですけど、とりあえず人間よりはめちゃくちゃ長い。少々古く感じる言葉遣いも、1000年前の人間でしたら当然と思えます。
そして愛する人に裏切られ、人間と自分を裏切った男(の子孫まで)をずっと憎んでいる。さらに、生贄となったため龍神様の妻となり、自身も龍の体になっている…と属性モリモリです。
清彦に対しても基本は冷たく、氷の女王のようです。くらっち(有沙瞳さん)は元々可愛い系よりはクール系の娘役さんだと思いますので、彼女が冷たい目をしていると、本当に怖い。美しいけど怖い。
しかしその中でふと自身が人間だったこと、そして愛する男性の面影を見たのか、清彦に対して慈愛の表情を浮かべながら優しく接するシーンがあります。
呼び名も「清彦殿」から「清彦」と呼び捨てになり、声もワントーン高くなり、そしてなんとも愛おしそうに彼を見る姿。からの一瞬でまた氷の女王に戻ってしまう演技の切り替えの上手さに舌を巻きます。
しかもそれがどこかいじらしく見えて、とても可愛いのです。
二人のラストシーンは圧巻でした
個人的に、二人のラストシーン…玉姫が龍の体になってからの展開は圧巻でした。
ただ真摯に玉姫に接してきた清彦。そのため、玉姫の中には彼に対しての情が芽生え、それは人間への情となり。
30年後の地上へ戻っても「心臓を掴まれたまま」の清彦は玉姫の元へ行き、ただただ感情をぶつけ合います。またこのぶつけ合いがいいんですよ…。武器とか小道具なしのグーパンし合う感じが(表現がひどくてすみません)。
玉姫をこよなく愛していた龍神に嫉妬を受けた清彦は殺されそうになりますが、そこを玉姫がかばい、清彦の腕の中で息を引き取ります。
その後、地上に戻った清彦はずっと開けられなかった箱をあけ…。
展開はある程度オーソドックスではあるものの、非常に叙情的で、ラストシーンと同じく雨のように観客の心に染み入ってきます。あの時の瀬央さんの表情が忘れられません。本当に素晴らしかった。
デュエダンについてもちょっとだけ
せっかくなので、デュエダンについてもちょっとだけ触れたいと思います。
本編では結ばれることがなかった清彦と玉姫ですが、それをカバーするかのような情熱的な振り付けとなっていて、宝塚的なトキメキを得られる印象となっています。
客観的に文字にするとこんな感じなのですが、私は瀬央さんがちょっと情熱的な振り付けをするとなぜか笑いがこみ上げてきてしまってダメでした。
ごめんなさい瀬央さん…。
ちなみに95期の男役さんはだいたいそうなります。私の中で下級生のイメージが消えないからだと思うのですが、なんとも失礼な話だなと自分でも思ってます。
花組の子は大丈夫なんですけど。多分昔からイキってるからでしょうね…。
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