「LOVE AND ALL THAT JAZZ」2幕感想(ネタバレあり)|心の変化に痛みも感じる2幕。オチは…どうなの?

月組
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前回の1幕の記事に続きまして、今回は2幕の感想です。

1幕ではきよら羽龍さん演じるユダヤ人、レナーテを自由にさせるために奔走していた風間柚乃さん演じるルーカスですが、2幕では自身が(言い方がアレですが)差別の対象になります。

国が変わると見られ方が大きく変わり、突然敵として扱われてしまう時代で、ひたむきに生きる姿が描かれています。

タカラヅカニュースで初日の映像を見たのですが、からんちゃんがご挨拶で、演出の谷先生が実際にユダヤ人のご夫婦の方から伺ったお話を元に作られたそうですね。

ルーカスやレナーテのような経験をされた方ってすごいな……。でも当時はそれが珍しいことでもなかったのかな……などと思いを馳せつつ、今回もあらすじ+感想の長文になっております。

ネタバレしまくりなので、それは困る!という方は閲覧をお控えくださいね。

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心が痛む、カナダの家族との交流

ルーカスが目を覚ましたのはカナダのとあるお家。

海岸に打ち上げられていた彼を、親切にも介抱してくれていました。

1幕のラストで撃たれた後、漁船に保護され手当をしてもらったものの、偽造した身分証により、ドイツの中佐(兵士)と思われたルーカス。

カナダで捕虜として捕らえられることになりましたが、ルーカスは「捕まるとしてもナチスの兵士ではなく、一人のドイツ人として捕らえられるほうがいい」と決断し、港につく直前に自ら海に身を投げたのでした。

そんな事情もあり、ドイツでは禁止とされていたジャズがラジオから流れてくる、そんな「当たり前」のことに自由を感じるルーカスを、母、姉、妹の女性だけの一家は少しの間匿うことを決めます。

桃歌雪さん演じるお母さん、ケイトは先のドイツ軍との戦争で夫を失ったため、ドイツ人に対して恨みを抱いています。

子供がいたからこそ我慢できたものの、その我慢は憎しみとして自分の中にこびりついてしまった……と話す彼女。

特にドイツ人に恨みもない姉妹二人は、ルーカスにも優しく接してくれるのですが……。

姉・オリビア(羽音みかさん)の元に、戦争に行っている婚約者からの手紙が届きます。

戦争が終わったら結婚できるはずでしたが、いつもの手紙とともに、彼がドイツ軍との戦争で亡くなってしまった通知も同封されていました。

あまりのショックに、狂乱しながら部屋に戻るオリビア。

母・ケイトは「我慢して憎しみに変わらないように、思いっきり悲しませてあげることが必要」。なんとも深い言葉です……。

しばらくして、部屋から出てきたオリビアは猟銃をルーカスに向かって撃ちます。

思わず止める家族と、泣き崩れるオリビア。

このシーンは本当に胸が痛みます。

あくまで戦争で死んだので、全ての敵国(今回はドイツ)人が死ねばいいと思っているわけではなくても、愛しい人を殺した国の人に対して、何かしら仕返しをしてやりたい!!と行動に出てしまうのは、責められない部分なわけで……。

そんなオリビアに対して、ルーカスは微笑みは幸せを運んでくるから、どうか泣かないでほしいと一曲。

またオリビアもいい子なんですよね。いい子というか、ルーカスを撃って殺したところで、何も解決しないことはわかっている賢いひと。

ルーカスの言葉に、オリビアは「早く逃げて」と叫びます。

ドイツ人が家にいると通報したから、捕らえられてしまう。だから逃げてと言うのです。

とはいえ、既に追って(兵士かな)はやってきており……ルーカスは捕らえられてしまいます。

余談ですが、妹ドロシーちゃん役の一乃凜ちゃんめっちゃ愛らしくて可愛かったです…次回から要チェックや!

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捕虜収容所での交流・脱走

ドイツ人の捕虜が収容されているところへ、ルーカスが新入りとして入ってきます。

このシーンから専科のお二人、ゆうちゃんさん(汝鳥伶さん)とゆりちゃん(紫門ゆりやさん)が本格参戦。

ゆりちゃんはまだ月組のイメージで見てますけども(笑)。

きちんとカナダで市民権を得て住んでいたものの、戦争が起こったことにより捕虜になってしまった方々のようです。

ルーカスもそちら側……かと思いきや、これまた偽造された身分証のおかげ(?)で、軍人と誤解され、兵士専用の収容所に行くまでの間、一般の収容所に入っておく、という措置になりました。

最初は他のドイツ人捕虜たちにも兵士と誤解されていましたが、事情を話し、さらにレナーテの存在も確認できたことで皆が協力的に。

さらに、「ピアノがあれば自分が軍人ではなくピアニストだと証明できる」とのことで、なんとピアノを取り寄せ(!)、「ムーンライト・セレナーデ」を披露。

カナダ軍も含めて捕虜収容所にいる人々をその演奏で魅了しますが、それでも兵士であることの疑念を解くまでには至りませんでした。

ゆうちゃんさん演じる”教授”フリードリヒ曰く、「所長は、認める勇気がなかった人なのです」。

自分の過ちを認めることって、本当に勇気がいりますよね。

ちなみにですが、おだちんはピアノを披露しつつもほぼ踊ってました。

演出上ね、演出上……

このままでは兵士収容所に送られてしまい、レナーテとの再会もできないだろう……そう考えていたルーカスに対し、教授たちは「じゃあ、脱獄ですね」とアッサリ。

どうにかしてルーカスを助けたいと思うようになった彼らは、ユダヤ人のゴミ収集業者の兄弟(たぶん)の協力を得て、ゴミ収集の日にルーカスが入ったゴミ箱を運んでいってもらう作戦を立てます。

この収容所の皆も、言えば同じ国の人というだけで、すごく献身的に協力してくれるんですよね。

それがすごいなと思って。

私が同じ立場の時、そこまで(しかもそんなに知らない人に対して)できるだろうか?って。

劇中で、教授がルーカスに対して「あなたは奇妙な人だ」と評していました。

何もなくても、人の心を動かしてしまう「不思議なものを持っている」と。

確かに、特に(内情や人格を)深く知らなくても「この人のために何かしてあげたいな」と思えることはありますからね。それの拡大版って感じなのかな。

余談ですが、ゆうちゃんさんは今作では確か3曲も歌ってらして、うち1曲はおだちんとのデュエット!専科さんが多く歌うことって最近少ないので、嬉しかったですね。

収容所の皆の涙ぐましい協力を得て、なんとかルーカスは脱獄に成功。

無事に収容所は抜けたものの、車が故障してしまい、ルーカスは徒歩でレナーテが待つモントリオールを目指すことに。

途中、アメリカ領土に入ればカナダ軍は追ってこれませんが、アメリカもドイツと敵対しているため、捕まるリスクが。さらに、アメリカでも雪深いところでは、生きてたどり着けるかもわからない……。

ですが、ルーカスは「それでも自分は行かなければならないし、生きるためにこうしているのだから生き抜く」と強い意思で、徒歩で目指すことを決意します。

ほどなく、追いついた所長たちに責め立てられるユダヤ人のゴミ捨て業者の二人(蘭尚樹くん&礼華はるちゃん)。

彼らの言葉もすごく刺さりました。

ユダヤ人は恩義を裏切らない、同胞を助けてくれた人はユダヤ人すべてがその人の味方になるっていう考え方もすごいなって思ったんですけど、

ユダヤの言葉にあると劇中で言われていたものがあって。

正確な文章が思い出せないのでニュアンスで申し訳ないんですが、自分を神を思って上からの視点でモノを言っていると結局下に降ろされちゃって、下から見ていると神の視点(上)まで行ける……みたいな、どの立場で物事を考えますか?というもの。

刺さった割に全然覚えてなくて我ながらひどいなと思うんですが、そんな教えを教育されているってすげえな!と思ったんですよね。

ユダヤ教はかなり厳格だと聞きますので、教えも幼い頃からカチっとしているのかもしれませんね。

その言葉を聞いた所長(千海華蘭さん)は、ついに自身の心に沿った行動を取ります。

ルーカスを見逃し、収容所に戻るのでした。

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雪山を歩くおだちん、そして……

雪山の中、一人進んでいくルーカス、むしろもうおだちん

ここから5分?もっとかな?ずっとおだちんのターン!と言わんばかりに、ひたすら歌う!歩く!(雪山を)

正直「もしかして、もうここで死んでしまうんやろうか……?」と心配になってしまうくらいの絶唱なので、聴きどころ(見どころ)ではあるのですが、初見なこともあってハラハラしました。

…そして、たどり着いたモントリオール。

華やかな街を、オシャレな人々が歩き、その中にはレナーテの姿もありました。

「よかった、おだちん(もうおだちんに同化してる)生きてた!」という気持ちと「めっちゃ歩いたやん」という気持ちと「どれくらいの時間が経った設定なんやろ…?」といった、複雑な気持ちが絡みますが、とにもかくにもレナーテとの再会はどのように描かれるのか?に期待が高まります。

そこで突然飛び込んできた「戦争は終わったのよ!」「街からはロシア軍が撤退していったわ!」というセリフとともに始まるダンス。

え?

どこまでがフィクションでどこまでがリアルなのかわかりませんが、少なくともルーカスやレナーテのような経験をされた方がいると思うと……。

一緒におどるおだちんとおはねちゃん、そしてたまに人混みに押されるような振り付けが差し込まれ。

ん??

一体、私は何を見ているのだろう……?と思いながら手拍子をしたのは久しぶりでした。

最後はルーカスとレナーテが抱き合って終わりなんですけど、それはいいんですよ。

それはいいんだけど、ここまでゆっくりじっくりと盛り上げてきたものが突然すぱっと「終わりです!」って投げつけられたように思えてしまって、個人的には尻切れトンボ感が強かったです。

それなら抱き合って一言交わしてくれたってよかったし、戦争が終わったのはそれはそれでいいから、二人が去っていくのに合わせて踊りが入っていくとか(「CASANOVA」みたいなイメージ)でもよかったんじゃないのかな……と。

その後、プチフィナーレといっていいのか、赤基調のお衣装で、全員でSing!Sing!Sing!を歌って終了。

正直、フィナーレがなかったら置いてきぼりなまま終わった可能性があるので、私としてはありがたかったですね…。

(Sing!Sing!Sing!自体はとてもよかったです)

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皆頑張っていたけど、どうしてもラストが引っかかる…

おだちんをはじめ、皆とても頑張っていました。

それ自体は非常に素晴らしいことなのですが……どうしてもお話のラストがもっと何か、なかったんかなあと思ってしまいます。

彼女たちの頑張りをもっと感動で終わらせたかった!という気持ちと言ったらいいのでしょうか。

自分の中でくすぶりが残ってしまったことが残念でなりません。

逆に、ラストはこんなもん(失礼な言い方ですけど)と思っていれば、それまでの過程は色々と学ばされる、考えさせられる部分も多く、重く辛い場面もありますが楽しめる内容になっていると感じました。

全体的に若手で構成されているメンバーなので、「これからの月組を担っていく若手を知りたい!」という方にもオススメな一作。

18日にライブ配信がありますので、興味がある方はチェックしてみてはいかがでしょうか?

1幕の感想はこちら
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