1月25日の13時公演、星組さんの「霧深きエルベのほとり / ESTRELLAS~星たち」を観劇してきました。
2018年の最後はファントムで、こちらの作品が2019年最初の宝塚観劇となり、大体2ヶ月ぶりに劇場に足を運ぶことになりました。
前情報で「泣く!!」とは聞いておりまして、作品としても旧き良き名作として語り継がれているものであったため、オチも知っている状態。
なので「泣くっていってもな~!」という感じだったのですが、泣きました。
前日にライブビューイングで観劇していた「アンナ・カレーニナ」も二人が結ばれないお話で、こちらもそうなのですが…心に沁みる部分が違うんですよね。お話って面白い!
顔で笑って心で泣く、日本人が好きな「人情」を感じさせる作品
私がこの作品を観て思ったことは、「日本人が好きな人情物語だなあ」ということでした。
恋愛作品なのに人情!?というところなど、色々とツッコミどころはあるかと思いますが、日本人が美徳とする「引く美学」とでもいうのでしょうか。
このお話の主人公カールは、まさに「顔で笑って心で泣く」を体現した、思わず同情してしまう、グっとくる行動を自然にやってのけます。
下町人情物語とでも言うのかなあ。寅さんみたいな。もちろんもっと色々とオシャレですが(決して寅さんをけなしているわけではありません!)。
我々が昔から慣れ親しんでいるであろう、人情物語を上手く宝塚的に落とし込んでいる、そういった印象を受けました。
最初は「ショー始まったんかな?」と思った
ビア祭中の1週間程度の出来事、という背景があるため、いきなりビア祭の踊り??から始まります。
しかも結構長い。「ショー始まったんかな?」と思いました。
別にそれ自体がイヤとかではないのですが、もっと静かに始まるのかと思っていたので…(笑)
私はエルベ自体この星組さんの公演が初見ですので、上田先生がどのように潤色されたのかはわかりません。
お話を通して観ると、この作品は正直言うとメインとなる登場人物が非常に少なく、当然ではありますがカールとマルギット二人だけのシーンが中心です。2番手の礼真琴さんが演じるフロリアンの出番さえそんなに多くない。
本公演は全ての組子に出番があるべきですから、きちんとそういうシーンも作らなければならないと思います。が、登場人物を雑多に増やしても…ということで、ビア祭で踊る男女が頻繁に出てきたのかなーと邪推しています。
でもお祭りのシーンが頻繁に出てくることによって、二人が置かれている状況(お祭りで浮かれているのか?という展開など)がわかりやすいですし、ドイツの民族衣装(風衣装)も可愛かったです。
マルギットの「スーパーお嬢様」感、私は好きです
この作品は、カールと恋に落ちる良家のお嬢様マルギットがなかなかの曲者で、他の方の感想を観ても「こりゃないわ~!」という印象を受けることが多いようですね。
上田先生も仰っていましたが(ニュアンスです!)、マルギットは今の日本で受け入れられやすい女性のタイプとはやはり違いますし、優美で愚かなことも「よし」とされていた時代のお話でもあります。
演じていたあーちゃん(綺咲愛里さん)でさえ「行動に疑問が…」と複雑な心境だったようですから、大変だったと思います。
私はそんなマルギットのスーパーお嬢様感は好きだったりします。
本当に何もわからないだけなんですよね。カールも言っていましたが「上流階級の生活が染み付いている」と。
それが当たり前で過ごしてきたからわからないだけだという、「なんで特等席じゃだめなの?」みたいな。
腹たったらいきなりピアノ弾き出すのも可愛くて、ずっと守られてきたから色々知らないだけなんだろうな…という、21歳の彼女ですがもう少し幼く見えてしまいますね。
妹のシュザンヌ(有沙瞳さん)がしっかりしているから余計に。
シュザンヌは辛い立場ながら気丈にフロリアンを元気づけていて、こちらも身を引いてますよね…。彼女も幸せになってくれたらいいなと思います。
フロリアンは本当に出来た子…すぎない?
マルギットを献身的に支えるフロリアン。
身分が違うと言えるカールにも対等に接し、優しい言葉をかけてくれます。
自分がマルギットを愛しているからこそ幸せになってほしいと二人を応援し…非常に出来た子だと思います。むしろすごい。
カールの本質までスカッと見抜いてるじゃないですか。なんでなんで。メンタリストかな?
フロリアンは非常に良い子、出来た子で素晴らしいと思います。
が、あまりにも出来た子すぎて、どこかでぷつりと線が切れたら心が壊れてしまうのでは?と不安にもなるほど善人すぎてしまいます。
「アンナ・カレーニナ」のカレーニンも包容力がある善人でしたが、世間体を気にしていたり、嫉妬してアンナを許そうとしなかったりといった、人間くさいところ、そしてそこと向き合って赦す境地に至ったので怖さがないのですが…
フロリアンはなんというか、弱点がなさすぎて逆に怖いという感じでした。
マルギットと共にかはわかりませんが、彼が幸せに暮らしてくれたらいいな…と思います。
コミカルで心が温かいひと、カール
紅ゆずるさんのカール、素敵でした~。 重さと軽さのバランス感覚が絶妙な方なのかな、と感じます。「ここ笑っても大丈夫なの…?」と迷わせるような感じではなく、「笑ってええんやで!」ってとこまでちゃんと持っていってくださる。
カールが持つ人の温かさが伝わってくるようなお芝居だったと思います。
田舎者でガサツだけど、心は温かい。それは妹のベティ(水乃ゆりさん)も同じですよね(あの子はなまっているだけでガサツではないでしょうけど)。歩き方めっちゃ面白くて笑ってしまいました…。
元カノのアンゼリカ(音波みのりさん)に対しても怒ることなく、幸せになってくれたらいい…というカール、男じゃないですか。本当に。
結婚したいほどの人から、自分の意思で身を引くというのは心が裂かれるほどの痛みだと思います。相手も結婚を望んでいるから余計に。
だけどそれを決断出来る、さらに自分が嫌われて悪者になってしまえば「自分は悪くない、あいつが悪かったからなんだ」と人のせいに出来て、立ち直るのが早くなる。
本当に心が温かく、強いひとなんだと思います。
自分が辛いのを隠して、トビアス(七海ひろきさん)とベティの結婚を思いっきり祝福してあげたり…。
だからこそヴェロニカ(英真なおきさん)とのシーンがめちゃくちゃ泣けてきます。
またじゅんこさん演じるヴェロニカが味があっていいんです…。素敵な女将さん。
ラストの余韻も好みでした
ラスト、カールが既にハンブルグを去った後にフロリアンとマルギットが酒場にやってくる…という展開もベタですが好きです。
そもそもなぜ二人がやってきたのかは明確に描かれていません。
カールがあんなことをするはずないと思ったのか、何か理由があるだろうからそれを聞きたかったのか、それとも一言文句を言いたかったのか…。
色々と想像できる余白があるのもいいなあと思います。
そこからの鴎の歌も泣けますね…劇場で泣いてらっしゃる方も多かったようでした。
私は1回しか観劇できませんが、複数回観ることでもっと深く楽しめる、偉大な作品なのだろうと感じました。
カールの水夫仲間の皆も可愛かったな~!
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