【星組】見守り続ける純愛に涙。「シラノ・ド・ベルジュラック」感想2:2つの気高き魂の話(ネタバレしまくり)

星組
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今日も「シラノ・ド・ベルジュラック」の感想です。

前回の感想記事にも書いたのですが、もっとコメディ寄りなのかな?と思っていたら思いがけぬ純愛模様に感動し、涙がホロリと落ちるようないい意味で感情を裏切られるようなストーリーでした。

今回は、もうちょっとそのストーリーについて「良かったんや~!!」という点を語りたい!という記事です。

びっくりするくらいにネタバレを含みますので、未観劇の方はご注意くださいね。

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シラノの破天荒さに潜む繊細さ

シラノは武芸の達人でもありながら、詩人としての才覚も非常に高く、どちらでも名がある人物。

そうでありつつも、本人は大きな鼻がコンプレックスのため自身の容姿に自信がありません。

また、芝居の脚本を書いても気に入らない役者には演じさせない、というちょっと偏屈な部分も持ち合わせています。

劇中でもちょっとシラノの破天荒といいますか、激情的な部分を見せるシーンがあるのですが、その奥に潜む繊細さ、純粋さがいとこのロクサアヌへの想いを通じて見えてきます。

ロクサアヌに突然密会をねだられ、ついに自分の恋が実ったか!と思えば、新しく赴任したクリスチャンに恋してしまったので、とりなしてくれないかという内容に心からガッカリしながらも、愛するいとこのために約束をきっちり守ろうとする誠実さも、非常に心惹かれるものがあります。

まあ、イシさん(轟悠さん)の場合、あれだけの鼻があっても美しいのですが(笑)。

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懸命に一途に愛するクリスチャン

芝居小屋で偶然ロクサアヌを見つけ、その姿に一目惚れしてしまうクリスチャン。

最初こそシラノを挑発する場面もあるものの、ロクサアヌのいとこだとわかると「お義兄様!」と突然ひざまずいてしまうほどの直情型です(笑)。

自身に詩の技術がなく苦手なため、シラノの手を借りてロクサアヌに便りを送り続けますが、実際に再会すると詩的なことは全く頭からすり抜けて「口づけを(したい)」と要求してしまうあたり、やっぱり直情型です。

見た目は本当に麗しく、シラノも劇中で「寝ていても色男だな~!」と言わしめるほど。

シラノは自身の容姿にコンプレックスを抱えていながらも、他人の容姿についてくさすことなく(そういう段階を超えたのかもしれませんが)、素直にクリスチャンに対して褒めるんですよね。つよい。

それぞれ違う愛の形が面白い部分のひとつ

二人の魅力的な男性から愛されるのが、ヒロインのロクサアヌ。

彼女は聡明な女性で、また、自身も詩を愛しており、クリスチャンの手紙(中身はシラノが書いたもの)を心待ちにしている描写がなされています。

直接的な言葉を嫌い(嫌いというかセンスがないと考え)、わざわざ詩的な言い回しで言わないとときめかない彼女は、クリスチャンからすればしんどかったことでしょう(笑)。

クリスチャンと会話を交わすものの、彼の頭からは詩は浮かんできません。

そのためロクサアヌは機嫌を悪くし、部屋に帰ってしまうもののクリスチャンは諦めきれず、彼女の名を呼び続けます。

シラノに止められるも、ロクサアヌはバルコニーに出てきてしまい、その場をなんとか取り繕うために、シラノがクリスチャンの影武者として辛いに彼女に美しい詩を伝えることに(このとき、明かりがないためクリスチャンが直接喋らなくても大丈夫なのでした)。

クリスチャンはシラノの気持ちを知らないとはいえ、非常に自分の心を傷つけることであろうとも、自分の想い人の好きな相手だから……と協力し、恋の詩を送り続けるシラノに対して同情といいますか、切ないながらもなんていい人なんだろうなと思わせてくれます。

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二人とも「気高き魂」の持ち主だったと思う

彼女をずっと狙っているド・ギッシュ伯爵の意趣返しにより、イスパニア軍との戦争に駆り出されることとなった、ガスコン青年隊。

空腹に耐えきれず、士気が下がっている上に、明日には敵に囲まれてしまうだろう…といった絶望的な状況の中、シラノは念の為にと別れの詩を書き、クリスチャンに渡します。

それまでは中身を改めることがそうなかったクリスチャンが珍しく詩を見てみると、そこには涙の跡が。

シラノも死ぬのが怖いのか、そしてもしかしたら、彼もロクサアヌを愛していたのか…?

そんな中、まさかのまさか。ロクサアヌたちが戦線に援護物資を持って現れました。

一時の夫婦の逢瀬の中、ロクサアヌは夫であるクリスチャンに対して、「毎日のようにお手紙をくれたこと」、そして「最初はあなたの容姿に惹かれていたけれど、今はあなたの詩の中にある気高き魂を愛している」ことを伝えます。

想像する以上に手紙が送られていたこと、そして容姿ではなく中身を愛していると言われたことで、クリスチャンはロクサアヌが愛しているのは外側の自分ではなく、ずっと詩を送っていたシラノを愛していることに気づいてしまいます。

正直それでもそのまま嘘を突き通せばいいじゃんとも思ってしまうのですが、クリスチャンはシラノにこの出来事を話し、「ロクサアヌが本当に愛しているのは君だ」とまで。

シラノはシラノでそのことは嬉しいと思いつつも、クリスチャンの気持ちを慮り、本当のことを言う必要はないと告げ、クリスチャンも君の幸せを潰したくないと。

確かに詩を書いているのはシラノなので気高き魂であることは間違いないのですが、クリスチャン自身も詩は書けないけど高潔な魂を持っているんじゃないかなと感じるシーンでした。

 

なんて純愛なんだ…と泣けるラスト

その後、イスパニア軍の砲撃によりクリスチャンは大きなキズを受けてしまいます。

シラノは「(クリスチャンが求めていたように)ロクサアヌには本当のことを話した」と嘘をつき、腕の中で彼を看取ります。

私としては、ここでシラノが本当のことを言って、ロクサアヌとハッピーエンドかしら?なんてゆるく考えていたのですが、全然そうではありませんでした。

時は経ち、14年後。

ロクサアヌは修道院にいました。

そう、シラノは本当のことを言うことなく、毎週土曜日に彼女のもとへ行き、1週間の出来事を話す…という行為を続けていたのです。

愛する人をひたすらに見守るという行為を、14年間も。普通の人にできることじゃないよ…。

この日も、いつもの時間より少しおくれてシラノが修道院にやってきました。

その週に起きたことを話した後、クリスチャンからの手紙(詩)をシラノが読むことに。

これまで読むことがなかった詩を彼が読んだとき、ロクサアヌは昔暗がりの中で美しい詩を読んでくれた人がシラノだと気づきます。

14年も本当のことを言わずに自分を見守ってくれていたシラノに改めて愛を伝えますが、実はシラノは修道院に来るまでに誰からの恨みか、子供を使ったやり方で大怪我を負っており、動いていては命に関わる状態でした。

そのため、彼の体は限界を迎えており…せっかく想いが通じ合ったのに、この世を去ってしまいます。

本当にこのラストはホロリとしました。

なんとかなってくれ~!!と思いましたし、ここまでピュアな愛を貫き通す気高き魂がとても美しくて。

真実を知ったほうがよかったのか、どうだったのか……。

どちらがいい、ともいえない話ではあるのですが、ロクサアヌは真実を知ったほうがよかったのか、そのまま知らないほうがよかったのか、どちらなんでしょうね。

真実を知ってしまったがゆえに、愛する人を二人とも自分の目の前で亡くしてしまったというショックは相当大きいと思いますし……。

自分だったらどっちがいいだろう?と考えると非常に難しいです。

ただ、シラノの想いが通じたことを考えれば、よかったのかなあとも思えますし。難しい。

そんなこんなで、面白いお話です。

と、熱量だけでここまでゴリゴリ書いてきましたが、もう1回観たい!と思わせる作品でした。

大したことではありませんが、シラノが凋落した理由やなぜ狙われているのかをもうちょっと咀嚼したいところではあるので、配信でしっかり聞き逃さないようにしようかなと思っています。

また、今回は書ききれていませんが、美稀千種さん演じるル・ブレのギターのシーンや、てんてん(天寿光希さん)演じるド・ギッシュ伯爵のコメディシーン(とくにロクサアヌとのやり取りが面白すぎる)など、まだまだ見どころはたくさんあります!

また配信を拝見したら書きたいことが出てきそうだなと感じつつ、今回はここまで!

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

 

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