【宙組】相反した気持ちが残る、上田久美子先生の意欲作。「FLYING SAPA(2020.08.04)」感想(ネタバレあり)

宙組
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8月4日、梅田芸術劇場に宙組さんを観劇しに行ってきました。

上田久美子先生!SF!ということで非常に興味が強い内容でしたが、赤坂ACTシアター公演のみだったので、遠征はせずにライブビューイングで楽しもう……というところ、様々なできごとがあり、期せずして大阪公演が行われることとなり、これは生で!ぜひ!ということで、チケットを取りました。

お話はとてもおもしろかったですし、音楽も、セットも、とてもとても素敵でした。

ウエクミ先生の意欲作だな、という感じなのですが……。感想を言うのがとてもむずかしいな、とも思っています。

いつもよりもかなり分かりづらい文章になっている自信がございます。すみません…。

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「何」に意味を見出すのか、それで評価が変わりそう

なぜ感想を言うのが難しいと考えるのか、それは「宝塚を観る人は一体何を求めているのか」というのが、人それぞれ違うからです。

例えば「宝塚といえば華やかなセットで男役と娘役のロマンスがあって、ハッピーエンドで…!」というキラキラな感じを求めている方であれば、今回の作品は「合わない」と思います。

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歌がない、淡々としたストレート・プレイ

健康状態や基本的な情報だけでなく、その思想まで管理されている世界、ポルンカ(水星)。そんなディストピアといえる星が部隊で、みなは幸せに暮らしているのか、それともどこか陰鬱とした気持ちを抱えているのかわかりません。

そんな世界でどこまでも土埃にまみれながら、それでも何かを掴もうとして真風涼帆さん演じるバラクが進んでいく、そしてひとつの答えを見出す、そんなお話です。

宝塚の本公演でやるには尖った、一般演劇に近いようなシナリオ、そして内容かなと思いました。宝塚も一般演劇もシナリオ面で大きく違いはないと思うのですが、その中でも先鋭化している、と言った方が正しいのかもしれません。

劇中歌はありません。ストレート・プレイと言っていいと思います。

なんで歌はないんだろう?と考えたとき、多分ポルンカには歌がないんだろうなって思いました。地球を脱出して15年、芸術がそこまで進んでいないのかも。

だから、旧地球の言葉の歌しか存在していなくて、それを知っている人しか歌えなくて……っていう背景なのかなと考えています。

いい作品だけど、モヤモヤしてしまう

私は「FLYING SAPA」という作品は好きです。とてもおもしろいと思います。

だけど、どこかモヤモヤが残っています。

2幕の終盤でバラクは究極の選択とも言える質問を投げかけられますが、その上で彼が選んだ選択肢は間違っているとも合っているとも言えません。

どっちが正しいのだろう?そもそもどちらが正しいとか言えるのだろうか?と考えさせられます。バラクが選んだ道は「希望」で、グッドエンドではあると思いますが。

自分で選択肢を選びストーリーを進める「ノベルゲーム」ではよく、開発が考えうる「史実・最上のエンディング」といえる「トゥルーエンド(ハッピーエンド)」、そして最上ではないけれど悪いものではない「グッドエンド」、悪い方向に行ってしまった「バッドエンド」といった分岐によって進むエンディングが違います。

そういう意味で「グッドエンド」と使っています。
じゃあトゥルーエンドはどうだと思う?と言われると…また難しいのですが。

別にこのバラクの返答がモヤモヤの原因……というわけではないのですが、何がひっかかるんだろう。自分でもわからないんですよね。

モヤモヤを残すのがウエクミ先生の意図だとしたら、まんまとハマっています(笑)。

素晴らしい内容だった、けど2回目はあるかと言われると

本当にこの作品には相反する気持ちがたくさんでてきます。

何度も繰り返すようですが、お話は面白くて素晴らしい内容でした。だけど「もう1回すぐに観たい!!」という気持ちには不思議ですがならないんです。

自分の中での咀嚼が十分に足りていない可能性大なんですけども。

そして、なんだかんだいって千秋楽の配信は観ると思いますけども……。(観ました。)

うっすらと言葉にすると、「これは作品を観るものであって、人を観るものではない」という感じでしょうか。

私は観劇の際、ある程度下級生もどんな役をしているかなとか、どのような表情をしているかなとか気になるタイプなのですが、この作品は全く気になりませんでした。

オペラもほとんど使っていません。

演者を通して物語を感じることは往々にしてあると思いますが、私は「FLYING SAPA」に関しては、演者の演技を通して云々よりもその世界に自分自身の身体でぶつかっていくような、そんな観劇でした。
そういった世界をきちんと構築した宙組生のみなさんが素晴らしい、とも言えますね。

世界であって人を観ていないと言いながらも、この作品は真風さんにとって代表作になるんじゃないのかなとも思っています。本当に色々と相反しています。

これを書きながらも、未だにモヤモヤしています。

その答えはサパにあるんですかねえ…(ないです)。

 

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