月組トップスター珠城りょうさん、美園さくらさんの退団公演となる「桜嵐記/Dream Chaser」を観劇してきました。
今回は運良く初日のチケットが手に入りまして……。
人生で一番多く初日を観ているのが月組さんだったりします(All For One、夢現無双/クルンテープ)。
お芝居は泣きに泣き、ショーでもホロリとさせられ……と、涙腺をボコボコに壊される内容でありました。
取り急ぎ、といった内容になってしまいますが、お芝居、ショー共にネタバレ全開で感想を書きたいと思います。(なので、ネタバレを知りたくない方はお控えください)
楠木三兄弟が本当に美しい
南北朝時代、南朝に仕え続けた忠義の武将と言われた楠木正成の息子、楠木正行の人生を描いた「桜嵐記」。
この正行というキャラクターが、たまきち(珠城りょうさん)にフィットしすぎていて。
ともすれば「正論すぎて逆に……」なことを言うのですが、それに嫌味や裏表が全くなく、ストレートに響いてくるのが、たまきちがそういった信念の持ち主だからなのでしょう。
河内弁を操る弟、正儀を演じるれいこちゃん(月城かなとさん)は快活なキャラクターで、自身が新人公演で演じた前田慶次を思い出させるような雰囲気。
もうひとりの弟で、唯一所帯持ちの正時を演じるちなつちゃん(鳳月杏さん)は、戦よりも料理が好きで、できるだけトラブルを避けて生きていきたいと思う平和(というか、めんどくささ回避?)思考。
キャラクターはそれぞれ違いつつも、みな剣の腕がよく、兄弟仲も良好。
この三兄弟が並ぶと、まるで浄瑠璃のお人形のようで……着物の華美さも相まって、本当にきらびやかで美しいです。
フィギュア出たら買うよ?

並んだ写真とかでないかなあ
弁内侍との心のふれあいも丁寧に描かれている
自分の命に対して何も思っていなかった弁内侍(美園さくらさん)と正行の心のふれあいは非常に丁寧に描かれています。
最初は復讐のことだけ考えていた彼女が、正行が北朝の雑兵を「北朝の人間」としてではなく、「貧しいゆえに戦いに来ただけの、一人の農民」として扱っていること。
他にも多くの民から慕われていることを知って、武家への見方が変わっていくんですよね。
戦に向かう前のわずかな時間だけ、二人で過ごせるのですが……
満開の桜の下で、ただ寄り添う二人がとても美しいです。
お話は後半から一気に涙へ……。
お話は結構ほのぼのしており、笑いを誘うシーンもふんだんに盛り込まれています。
初日だから特に笑いがあったのかもしれませんが(笑)。
不穏な種は色々あれど、という感じではありました。
が、ついに四條畷の戦いが始まり、楠木家は命を賭しての戦に挑みます。
そこからラストまでほぼ戦のシーンになるのですが、もうそこからは涙と鼻水がやばかったです。
まず演出がとても美しい。紙吹雪や桜などの「散りもの」とでも言うのでしょうか、使い方がすごいです。
また、合戦のシーンながらもそこに回想が含まれているなど、「ただひたすら戦う」だけのシーンにはなっていません。
このへんからはもう泣きながら夢中で観ていたので、記憶はあるんですけど、どう表現したらいいのかわかりません!!
ので、なぜ泣けたのか?という視点で書きたいと思います。
装束と3人の並びが美しい
最初から意味がわからないと思うんですけど(笑)、戦装束が美しくて泣けます。
三兄弟が順番に出てくる演出なのもにくいんですよ!
ちなちゃんが下手から、れいこちゃんが上手から(逆だったらごめんなさい)、そして真ん中のセリからたまきちが出てくるんですけど、
「ああ、この並びもこれで最後か……」って思ったらもうそれだけで泣ける。
兄弟の別れが泣ける
多勢に無勢の戦いなので、兄弟も無事では済みません。
最初に、兄をかばって正時がやられてしまいます。
この時の「三途の川で百合に会わないとならん」というセリフがいいんですよね……。
この感想でははしょっちゃってますが、正時の奥さんの百合(海乃美月さん)は、父が北朝に寝返ったため、離縁して北朝に逃しました。
しかし、百合は正時を心から愛していたので、彼の枷にならないよう自害していたのです。
その後、正行は「兄弟全員が死んではいけない」と正儀に逃げるよう促して……生き残るのがれいこちゃんだけ、ってのも、未来を感じますよねえ……。
正行の「残りの命は、一人の女のために使いたい」(超ニュアンス)っていうセリフもたまらんです。
回想も含めて泣ける
戦いの中、銀橋では父、楠木正成(輝月ゆうまさん)と3人の息子たちの過去の姿が出てきます。
この地に住む民をいつも慮っていた父の姿。
これでこんないい子どもたちが生まれたのね……とホロリときます。
援軍がおそすぎて泣ける
文句じゃないんですけ(笑)。
もう正行の命が途絶えるという時に、正儀とジンベエ(千海華蘭さん)が戻ってきて……
北朝との戦いの時に助けた雑兵が恩を返すために戻ってきてくれるんですよね。
もうここで泣きますよね、普通ね。
正行ももう死ぬ間際なのに、バシバシ指示を出すんですよ、すげえ。
指示出し終わったら死んじゃうんですけど、ジンベエがね……置いていきたくない!って言うんですよね。健気すぎませんか。泣くでしょこれ。
もうこれ書きながら思い出し泣きしてますからね!いい作品です。
ジンベエについてもめっちゃ書きたいですが、ちょっとだけ……。
彼は農民で少しのお金のために弁内侍の輿を運んでいたのですけど、正行に助けられてその姿を見て心を打たれ、仕えることを選びます。
ジンベエは一番ニュートラルな視点といいますか、マジョリティの視点から物事を見られる人物。
弁内侍に対してもしっかり意見をいいますし、人と人の間にいる潤滑油のような役割をこなしていて、めっちゃくちゃいい役なんです。
からんちゃんのキャラクターにもピッタリで、裏の主役だと思っています(笑)。
ラストがまた泣ける
この作品は一番最初と最後(と、劇中たまに)に老年になった正儀と弁内侍が出てきまして、過去の日々を振り返る構成になっているんですね。
それがまたなんていうのでしょう、じんわりと泣かせてくるんですよね……。
そして最後の最後に、出陣式?のシーンになるので、若い頃の三兄弟がまた出てくるんですよ。
そこでまあ泣けますよね。

マジ泣き通しでした
滅びの美しさが鮮烈に描かれた、刺さる作品
滅びが先にあっても、その先の日本の大きなうねりのために戦っている……。
そうまっすぐ言える正行はとても凛々しく、それでいてトップスターという立場であるたまきちにも重なる言葉だと思います。
単純に死んでしまって泣けるからいい話、というわけではなく。
正行の生き方があまりにもまっすぐで、だからこそこんなにも刺さってくるのかと。
滅びの美というのは確かにあり、日本人はそれを好む傾向にあるでしょう。
美しさだけでなく、その中の、まっすぐな芯が多くの方に届きますように……と願ってやまない作品です。
まだまだ天皇周りとか尊氏周りとか書けてないので、今後の観劇と共に書きたいです!
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